written in 29 Mar.1999
そろそろねたがなくなってきたシリーズ第３弾は「夏物語」（アルバム「さよならがくれたのは」収録）です。
この「夏物語」という曲は、都会に出ていっていた女性（主人公）が鉄道に乗って彼の待つどこか田舎（と思われる場所）に帰ると言う状況が描かれています。そう、今回はこの歌に歌われている鉄道路線を特定しようと言う無謀な試みです。しかも、私が知る範囲では鉄道マニアも特定をあきらめたという話です。
特定の材料になりそうな情景は実に少ないです。何せ、草原を抜けて海に向かう路線で、目的地の町のあたりは線路が海岸線近くを通っていて、窓の開く車両である事くらいなのです。そりゃまあ、いくらなんでもこれで絶対と言うレベルで特定するのは無理です。でも、私は強引に結論を出します。ずばり、「ＪＲ内房線」です。鉄道マニアにとってはちいぃっとも面白くない結論ですけど…。
まず、主人公である彼女の乗っている車両の窓が開く事に注目します。これはすなわち、比較的旧型の普通列車、ないしは急行列車用の車両である事を示します。ほとんどの特急列車用の車両、比較的最近の普通・急行列車用の車両は窓がはめ殺しになっていて開きません。ＪＲからは急行列車は激減しているので、普通列車とみなしてしまって構わないだろうと考えました。普通列車という事から、彼女が今まで住んでいた都会から２〜３時間以内の範囲であろうと仮定します。これはＪＲのダイヤから考えると、都市部から直接行けて普通列車で３時間以上かかる範囲には特急または急行が走っている事が多く、鉄道マニアでもない普通の人が普通列車だけを使って数時間もかけてどこかに行くと言う状況は考えにくいと言う判断によります。もちろん、途中まで特急で行って乗り継いだと言うシチュエーションも考えられますが、それだとどこでも話が成り立つと言う事で考えない事にしました。
次に、草原を抜けて行く事から関東の路線であろうと判断しました。草原と言うからには比較的起伏の少ない地形で、しかも心が荒みそうになるほどの都会に近い所となると私には関東地方しか思い付かなかったと言うのが正直なところです。起伏が少ないと言えば北海道あたりでも良さそうですが、札幌あたりでも果たして息が詰まるほどになるだろうかと考えて外しました。関西なら都市と言う点ではいいとしても、今度は草原がないんですね。阪和線の日根野をすぎた辺りからは近い雰囲気とも思えるんですが、いかんせん次に述べる海の方がちょっと…。
最後は海です。都会から普通列車で２〜３時間の範囲で、しかも海岸沿いを走るような路線って意外に少ないのです。先程阪和線を没にしたのはこの要件がうまく合いそうもないからです。阪和線から紀勢線に入ると路線図では海沿いを走っているようなんですが、実際に海が見えるのは崖っぷちの冷水浦（しみずうら）付近か、さらに２時間ほど南下して白浜をかなり過ぎた辺りになってしまいます。おまけに、紀勢線沿線は平野と言うほどのものはないのでイメージが合いません。
そこで内房線を見てみると、です。実は３月５〜７日に「宇宙の浜辺で…」を見に行った時に時間潰しもかねて房総半島を内房線、外房線経由で見てきました。もっと言うと、アルバム発売当時の１９９４年夏にも見てきました。東京を起点にすると３時間弱で館山まで行けます。千葉市を抜ける頃から草原を抜ける形になります―今回は冬だったのと住宅開発が進んでいて草原と言う感じではなかったのですが、１９９４年夏に行った時には田んぼとレンコン畑が一面に広がっていて草原っぽく見えました―。木更津、君津を抜けて単線になった辺りからかなりの部分が海岸沿いを走り、山側に入ると草原っぽい地形が続きます。いかがでしょう、歌詞の情景に近い雰囲気になっていないでしょうか？館山辺りまで行ってしまうと山が海岸沿いに迫る紀勢線と似たような雰囲気になってしまうので、もう少し手前の安房勝山あたりまでがちょうどいいのではないかと考えます。使用車両も千葉からは近郊型と言われるクロスシートとロングシートを組み合わせたタイプで窓も開く１１３系と呼ばれる奴ですから、申し分ないとはいきませんが悪くない雰囲気にはなると思います。
と言う事で、やっぱり今回も完全に特定すると言う訳には行きませんでしたが、今までよりは絞り込めたと思います。後は、作詞の鈴木佳蓉さんが関東出身であればまず間違いないと踏んでいますが…。大した根拠ではありませんが、比較的見慣れているであろう出身地の情景をイメージソースにしているのではないかと見ています。まあ、実際のところはどこか特定の路線をモデルにした訳ではなく、あくまでもイメージソースと言うところでしょう。よく検討すると特定の路線が浮かび上がるなんて仕掛けをして喜ぶ鉄道マニアじゃないでしょうから…。