written in 23 Jun.1999
いよいよ貨物輸送である。何だかんだと言ってろくに荷造りが出来ていない中で、である。現住所と新居まではざっと片道１２０km程ある。今回はスケジュールや荷造りの都合で愛車を酷使する事にしている。私の当初の見積もりでは７往復半を覚悟していた。使える日は４日だから１日２往復だ。ライトバンか何か借りてくるという手もあるにはあったが、会社が費用を出さないし、一度に運ぼうとすると積み下ろしに結構時間がかかるから狭い道に路上駐車を余儀なくされる新居側では避けたい選択だ。人海戦術を採るには人手を集めるのが大変だから―あまり人に触られたくない荷物もあるし―これも避けたい選択なのだ。と言う事で、可能な限り一人で、小分けにして運ぶと言う方法を選択したのだ。だから、代償は走行距離に来る訳だ。
まずは輸送初日だ。前日が職場の送別会で危うく深夜まで２次会３次会に引きずり回されるところだったが、意図的に酔いつぶれて１次会で脱出する事に成功した。と言っても、馬鹿にならない量のアルコールを体に入れて夜半過ぎまで起きていたから、何とか目を覚ましたのは朝も少し遅くなってからだった。と言う事は、この日は１往復でないと辛そうだ。辛うじてこの日の１往復分だけは荷造りを終えていたので、早速愛車に荷物を積み込んだ。最初だから普段使っていないものを中心にしている。そんなこんなで早速１往復目に出発したが特にトラブルもなく新居に着き、荷物を運び込んだ。すぐ近くにコンビニエンスストアがあるので、あらかじめ買っておいた菓子パンに合う飲み物を買ってきて昼食と言う事にした。ここで帰ってしまうとあまりに中途半端だし、もう１往復するには時間がない。寸法取りの時に見つけた不具合を思い出し、これまた近所のホームセンターに行く事にした。
一番気になっていた洗面台の排水の悪さを解決すべく、その手の薬剤を探したのだがこのホームセンターにはないのだ。うろうろしているとふと目に入ったものがあった。照明用のリモコンである。とりあえず照明器具も買っていないので必要なら購入、と言う事でチェックしておいた。目的のものは見つからなかったので、今度はこれまた近所の大型？スーパーに行ってようやく目的のものを見つけたのだった。ここで一つ思い出した事があった。照明器具を買っておかねばならないのだ。しかし、ホームセンターも大型スーパーもこの手の商品にはあまり強くないようで、私の気に入るようなものはなかったのだ。と言う事で、今度はやや遠くの家電店に赴く事にした。家電店では何とか気に入ったものを見つけたので―デザインはともかく、使っている蛍光管の種類などにはうるさいのだ―、ついでに洗濯機も見る事にした。こちらは何がなんだかさっぱり判らなかったので店員さんに置き場所の寸法などの条件を言ったら、某国の大財閥系のメーカーの製品を勧められた。あまり近くなさそうなコインランドリーに１年も通えば元が取れそうな値段だったので、連休明けに配達してもらう事にした。照明器具はもちろんお持ち帰りだ。
新居に戻って照明器具を取り付けたら夕方になっていた。翌日は仕事だと言う事で早めに戻る事にした。その帰り道の事である。高速道路に乗ったらやはり寝不足か、さすがに運転が怪しげになってきたのでサービスエリアで休憩する事にしたのだ。駐車場に車を停めてさて一寝入りと思った時である。隣にいた4t積みくらいのトラックの馬鹿ドライバーが私に向かって「後ろへ下がれ」と叫んできたのだ。言っておくが、私は普通車用のスペースにちゃんと停まっていたのだ。馬鹿ドライバーのトラックが私の隣の前後２台分のスペースを使って停まっていた訳だから、私が動かねばならない理由は一つもない。自分の読みの甘さで動きが取れないだけなんだから、何回でも切り返しするなり、バックして抜けるなり、私が去ってから動くなり、自力で解決すれば済む問題である。もちろん、私だって鬼ではないから丁寧に頼まれれば動けるように車を移動させる事くらい気軽にやる方だ。だが、この馬鹿ドライバーは動くのが当然とばかりに命令形で叫んでいるのだ。簡単に動いてしまうのははっきり言って癪だ。まずは２〜３回、無視した。さらに罵詈雑言が飛んできたので、今度は「人にものを頼むんなら言い方があるだろう！」と言ってやった。さらに訳の分からない―分かりたくもないが―事を言うので、「『すいませんが下がって頂けませんか』って言うんだろ！」と言ってやった。そういうやり取りを数回繰り返した頃、さすがに降りてきて殴りにきそうな雰囲気がしてきたので20cm程車を下げてやった。それでもまだ足りないらしく―馬鹿なだけでなく下手でもあるようだ―、結局1m程下がる事になった。最後に「最初から下がっとればええんや」といった意味の罵詈雑言を吐き捨てていったが、それはこちらの言う事だ。最初から大型車用のスペースに停めていれば誰にも遠慮なく動けるのだから。
輸送２日目は翌週末である。この日は友人１名に新居に来てもらって大物を運ぶ事にしていた。大物、即ち冷蔵庫と布団袋―もちろん中に布団が入っている―だ。布団はともかく、冷蔵庫なんか私の愛車で運べるのかと思う方もいらっしゃるだろうが、所詮80l程の小型のものだから運べるのである。その前に、町の清掃センターに使い古した９８互換機用のディスプレイを粗大ゴミとして持ち込まねばならなかった。私が休みで清掃センターが開いているのはもうこの日しかない。いまいち寝足りないと思いつつも急いで持ち込んだ。行くまで知らなかったのだが、持ち込み処理は有料なのだ。持ち込んだ帰りにガソリンスタンドに寄る気がなかったら財布を忘れていたかもしれない。とにかく無事に引き取ってもらえたのはいいのだが、持ち込んだゴミの量はセンターに入る時と出る時に車ごと重さを計ってゴミの量を求めるようになっている。その結果が20kg。２８６時代の１４インチディスプレイだからせいぜい10kgくらいの筈だから何となく納得が行かなかったが、ごたごた言っても仕方ない。これが1kgあたり１００円くらいだったらやり直しを要求するところだが…。
ディスプレイを処分して寮に戻ると、今度は冷蔵庫と布団袋を車に積み込む番だ。寮の階段は広いので、私の腕力でも一人で運ぶ事が出来る―ちなみにエレベーターはない―。とは言え、25kgの冷蔵庫と抱えると前の見えなくなる布団袋だから楽ではない。増してや、新居は階段が狭いので―しかも踊り場に使っていないエアコンの室外機が置いてある―一人では無理だろうという結論に達したのだ。と言う事で、来てもらえそうな友人に連絡を取って、新居の最寄り駅で落ち合う事にした。通常のルートを使うと寮と新居の間は２時間強かかる。約束の時刻まで３時間ほどの時点で冷蔵庫と布団袋を積んだだけ、と言う事でぎりぎりまで隙間を埋めるように小物を積み込んでから出発した。予想外に道が空いていて余裕をもって着けたのはうれしい誤算だった―決してぶっ飛ばした訳ではない―。前回行ったホームセンターで照明器具用リモコンを買ってから約束の時刻に駅に行くと、既に友人は来ていた。最寄り駅からは私の新居の前の道路に誘導してくれる案内表示？があるので、最短距離ではないがそのルートで新居に戻った。部屋で一息ついてから、いよいよ大物を部屋に運び込んだ。もちろん楽ではなかったが、小物も含めて３０分ほどで運び終えた。この時点でまだ昼過ぎと言うところなのでもう１往復という手もあったが、二人で日本橋巡りと言う事になった。一応、私も用事はあったのだ。
友人と二人、愛車を徒歩だと１０分弱かかる駐車場まで運んだ後、最寄り駅とは別の駅に向かった。駐車場に近いのと、ガス屋がその駅のすぐ側にあるのを知っていたので開栓の申し込みを兼ねたのだ。ガス屋では器具のカタログをいろいろもらったのだが、うちは風呂・キッチン用の給湯機以外にガスは使えないのだ―キッチンは電気こんろだ―。開栓は引っ越し終了の翌日と言う事で、終了当日には風呂に入れないと言うスケジュールになったが仕方ない。真夏だったら避けたいスケジュールだが、春ならまあ我慢できない事ではない。それから日本橋を二人してうろつき、難波の大きな本屋を見て帰ると言う友人と日本橋で買い物をすると言う私はそこで別れる事になった。あまり軽い物でないのは分かっていたから買った後すぐに帰れるようにしたのだ。引っ越しを機会に買いたかった物とはFAXである。ISDNルータとかTAには内線通話機能が付いている物があるが、これを利用してパソコンのプリンタ兼スキャナとして使ってやろうという魂胆である。絵描きの人なら当然まともなスキャナを買う方がいいに決まっているが、私はそこまで要求しないからこれでいいのだ。無事にFAXを買って、来た道を逆にたどって新居に戻った。あまり遅くならないうちか、目一杯遅くなってからでないとどうしても渋滞するから、FAXの動作確認もそこそこに一目散に寮に戻ったのだった。そして早く戻って翌日運ぶ荷物を荷造りしなければならないのだ。残り２日で見積もり５往復半のうち、まだ２往復しか消化してないのだ。さすがに私も少々焦りはじめていた…。