written in 18 May 2001
modified in 28 May 2001
modified in 1 Jul.2001
modified in 22 Jul.2002
あんもないとさんのページに「笠原弘子の歩き方」が掲載された時、正直言って私は「やられた！」と思いました。何故なら、私が書こうと思っていた事の大半がそこに書かれていたからです。「僕はいま、笠原弘子初心者に、ベスト・アルバムを聴かせるということに、非常に懐疑的になっている。 」というのは、私もずっと考えてきた事です。見方によっては笠原弘子のベストアルバムが「初めての人が聴いてみて分かったような気になる機能―私には昨今のベスト盤ブームってそういう傾向が強いと思える―」を捨ててしまっているとも取れますが。とりあえず大雑把に笠原弘子の歌を知るという機能を全うしていると言えるのは初のベスト盤である「Memories」（以下、区別の為「M1」と表記する）くらいのもので、「MemoriesII」（同「M2」）や「MemoriesIII」（同「M3」）となるとやけに初出が幅を利かせていたりシングルセレクション状態だったりで、ある程度はまり続けているファンには便利な存在でも最初のガイドブックとしてはお勧めしかねる面があります。その「M1」も発売が1992年ですから、今となっては「初期の」と断りを入れなければなりますまい。昨年発売された「hiroko kasahara super best」は4枚組ですが、1枚目と3枚目がスタジオテイクとライブテイクとの違いでほぼ同じ曲目、4枚目が過去に未収録の1曲を3テイク（+カラオケ2テイク）という構成ですから誰にでも広くお勧めとは言いかねるものがあります。となれば、これまたあんもないとさんと結論が似てくるのですが…適当なアルバムを見繕って聴いてもらうということにならざるを得ないでしょう。
さて、他の人はどんな考えだろうと思って少しネットを探してみました。気合を入れて探した訳ではないので仕方ないのですが、予想以上に「まずこのアルバムを」という勧め方をしているページは少なかったです。批評系を称するサイトでさえ評価に評者の好みがかなり含まれていたり―批評という言葉の意味を辞書で調べた方がいいのではないか？―して参考にならない有様。私が一番良いと思えたのはファンの作ったページではなく、「埋もれたJ-POPを発掘」と称するサイトでした。そのサイトで扱われた一番最初が弘子さんってのもなんかすごいような気がしますが…。そこでのお勧めは”とりあえず”と”はまったら”の2段階チョイスで、”とりあえず”が「M1」、「TAKE THE "K" TRAIN」、「aria」の3枚、”はまったら”が「L'EXPRESS FANTAISIE」、「Saga」、「M2」の3枚でした。結構いいところ突いていると思います。確かに「TAKE THE "K" TRAIN」はライブ盤とは言えトーク無しで幻想系ベスト盤と言っても差し支えない作りですから、「とりあえず」の3枚で弘子さんの大雑把な歩みを掴めます。
それでは私はどのアルバムを選べばいいだろう？ファン歴それなり、ベスト盤を勧めるのに疑問を感じている私が誰かに勧めるとすれば、それはどのような観点で選んだものであるべきだろう？言わば、私の笠原弘子観が問われている事になります。身近にいる人になら私の持っているアルバムを端から貸すという手段もあるでしょうが、たまたまこのページを読んだ人がCDショップに行って買ってくる事を前提にするなら多くても3枚までに抑えるべきでしょう。3枚でも出費は10000円くらいになりますから―レンタル屋に置いてあることはあまり期待できないのが辛いところ―何の予備知識もない人がぱっと出す金額としてはこれでも多すぎるというのが本音ですが、ベスト盤の使命の一端を捨てているようなベスト盤しかない状況では止むを得ません。題して「10000円で知る笠原弘子」。
まず1枚目に推したいのが「さよならがくれたのは」。弘子さんの歌手としての活動歴のほぼ中間にあたる1994年に発表されているからか、初期の雰囲気とも最近の雰囲気とも大きな違和感が感じられない点を考慮しての選択です。弘子さんの場合、同じ線の上で毎年進化を遂げるタイプと言うよりはいろいろな点を次々に見せて面的な広がりを見せていくタイプと言えると思いますので、時系列の中間点が平均値を表している訳ではない筈なのですが、発売当時の資料を見る限りこのアルバムが新規ファンの開拓を視野に入れて企画されている面が平均値ではなくても代表値たる性格を持つに至っていると考えます。
2枚目には1枚目とほぼ同じ理由で「MADRIGAL」を推します。これも1994年発表。「さよならがくれたのは」がポップス系の代表なら、こちらは幻想系の代表としての性格を持っていると考えます。半年の間隔でこれだけ性格の違うアルバムを発表しているという実績が、笠原弘子の実力の一端を示す事にもなるでしょう。
では3枚目にはどれを推すべきか。私は常々笠原弘子の歌を3本の柱―ポップス系、幻想系、アニメ系―として解釈しています。3枚選ぶなら最後の柱を紹介するのが順当な判断だと思いますが、実のところちょうどいい作品が見当たらないのが苦しいところです。別の考え方としては柱にとらわれずに（比較的）最近の作品を選ぶ事、ベスト盤やライブ盤から選ぶ事が考えられます。しかし、アニメ・イメージソングの歌い手として独特の位置を占める笠原弘子を示さないのは大きな手落ちとも考えられます。今の私にはどの道をベストとするかを決めるだけの力に欠けるので、3枚目候補をいくつか挙げてその中から聴く人が選択という形を取る事にしました。
3枚目の第1候補は「aria」です。ここ１〜2年の弘子さんのアルバムはアルバム同士の振幅が大きくてこれを最近の傾向とする事は出来ませんが、「癒し」という最近のトレンドに乗っている事とアルバム自体の完成度を評価しての選択です。トレンド重視ならこれを1枚目に推してもいいくらいですが、敢えてここに持って来ました。
第2候補ですが、反則気味の「アッセンブル・コンサート」はどうでしょうか。南風（なみかぜ）まろん名義のライブ仕立て（実際にライブ盤という訳ではない）、入手難という三重の反則チョイスですが、アニメ系ナンバーのバラエティに加え演技者としての笠原弘子をも堪能できる点を買いました。ただし、一度廉価盤として再発売されている上―私はこの廉価盤を所有―、その再発売からでも時間が経っている為入手性が悪いのが難点。
第3候補は「MY BEST FRIENDS」。アニメ・イメージソングのベスト盤です。1990年までの33曲（2枚組）、今となってはこれ以外の方法での入手は困難な事を考えれば、ファンを続けていく覚悟が1〜2枚目を聴いた時点で既に出来てしまっているなら迷う事はないでしょう。
…とまあ、3枚目を「候補」として3枚もでっち上げるという無責任なチョイスではありますが、私が人に勧めるとすればこの順番でまず3枚という事になります。3枚目の推薦順は上記の通りですが、まあ相手が知っている人ならその人に合わせて適宜変更というのもありでしょう。ただ、私が考えられる範囲ではこの3枚が笠原弘子的世界の代表にふさわしいと考えます。
さて、初心者にベスト盤を勧める事に懐疑的な立場である事は既に書いたとおりですが、改めて最新のベスト盤である「super best」を見ますと、4枚組のうちの2枚だけを抜き出して非限定の商品にすれば初心者向けに勧めやすいベスト盤であることに気付きます。1枚目が「MemoriesIV」と題された1998年までの10年間の代表曲集、2枚目が「My Best Friesnds 2」と題されたほぼ同期間のアニメ・イメージソング集ですから、これに会社が違う故に入っていない格好の幻想系アルバムを1枚もしくは「TAKE THE "K" TRAIN」を合わせれば3枚でかなりの範囲をカバーできますし、予算的にも7000円くらいに出来ると予想します―2枚組ベストなら4000円弱が妥当なところでしょう―。「10000円で知る」ならもう1枚アルバムを追加できますし。そんなことが実現するならば、4枚目に冒険して「NEO DECADENCE」を入れるなんて手も使えますが…まあ一般的には「aria」ですね。
もしこれを読んで次には何をと思われた方がいらっしゃれば、ぜひうちを始めとするファンサイトの感想などを読んで参考になさっていただければ幸いです。そんなの面倒だという方も中にはいらっしゃるかも知れませんが、肌の合う文章を載せているサイトを集中的に読んでいけばそんなに手間もかからないと思います。うちからリンクしているサイトをたどっても、アルバム毎の感想をほぼフォローしているサイトはそんなに多くないですし―それが情けないと言えば情けない―。とりあえず、ポップス系や幻想系に関しては昔に向かうほどかわいい系、現在に向かうほど大人っぽい路線に寄っていますから、お好みで方向を決めるのも一興かと。ただし、2000年以降に発売されているアルバムはかなりイメージが違っていますから一筋縄では行きませんが…。
既にファンの方には「自分ならこれを勧める」というチョイスを何らかの形で公開して頂けると、私にも参考になってありがたいです。ただ、当然ながら入手性なども考慮しないと画餅ってことになりますから…結構難しいですが。
いわみゆうこさんは弘子さん紹介本「MELODY FAIR」でお勧めアルバムとして「恋愛性理論〜Part1」「MADRIGAL」「aria」をピックアップされています。…やはり「aria」は強いか。(1 Jul.2001追記）
某所で見たお勧め盤は「MemoriesIII」、あるいは「本当の私」、幻想的な気分に浸りたいなら「MADRIGAL」でした。これで「MADRIGAL」も3票？(22 Jul.2002追記)
Modification History
- 28 May 2001
- 既に感想を書いているお勧め盤へのリンクを追加
- 1 Jul.2001
- いわみさんによるお勧め盤の情報を追記
- 22 Jul.2002
- 某所で見たお勧め盤の情報を追記